大切なのは「自分の目と心」
ー Ton Thien Hai Minh (トン・ティエン・ハイ・ミン)さん ー
2024年度から新たに始まった「大学生訪日研修」の第1回研修に参加したMinhさん。今は国際交流基金ベトナム日本文化交流センター(以下、JFVN)のアルバイトとして、ベトナムの大学や日本語センター、送出し機関などに電話やメールをして、日本語教育実施状況について聞きとり調査をする仕事をしています。

「見えない仕事」が見えた
―JFVNの仕事はどうですか?
JFVNは文化交流や日本語教育支援をする機関で、一般的な学校や会社とは違います。JFVNで仕事をしていて、いいことが2つあります。1つ目は、日本語教育機関調査を通じて、ベトナムの日本語教育事情について詳しくなったことです。2つ目は、日本人と一緒に働くことで日本人の仕事ぶりを知れることです。JFVNで働いている人が、文化イベントや日本語教育支援のために、毎日何をしているかを近くで見ることができます。皆さんが熱心に働いているので、私も楽しく働けています。私は今、自分のペースで仕事ができているので、ありがたいですが、もっと日本語を勉強したいし、自分の将来についてもこれから考えていきたいです。もっと色々なことにチャレンジしてみたいと思っています。
重要なのは「言語」じゃなくて「伝え方」
―ところで、Minhさんが日本語の勉強を始めたきっかけは何だったんでしょうか?
日本語は難しい言語だと聞いたので、挑戦してみたいと思ったのがきっかけです。でも大学に入ってから、周りの友人を見て、自分は日本に興味がないことに気づきました。私の友だちには日本オタクがたくさんいます。でも彼らは日本語学習へのモチベーションが長く続きません。最初に大きな理想を持っているからです。現実を見たとき、その理想が崩れてしまって、日本語学習へのモチベーションが下がってしまうんだと思います。日本はどんな国なのか、自分が関わる日本人はどんな人なのかを知ることが大事だと思います。
―じゃあMinhさんの場合はどうでしたか?
日本語学習を始めたときはモチベーションが高かったんですが、やっぱり日本語は難しかったのでやる気がなくなっていきました。でも、訪日研修に参加することになってから、モチベーションはどんどん上がりました。今、JFVNで働いていて、その高いモチベーションが維持できています。
―訪日研修で学んだことは今回の仕事にどのように活かされていますか?
研修では日本語があまり得意じゃない国の研修生もいました。私は「やさしい日本語」というのを知り、他の国の研修生に「やさしい日本語」を使って、相手に伝わるようにコミュニケーションを取ることを学びました。今の仕事はベトナム人にベトナム語で聞きとり調査をしますが、与えられた資料に基づいて聞きとりをしても、うまく伝わらないことがあります。そんな時は、言い方や表現を変えたり、相手に伝わる方法を考えたりして、コミュニケーションをとるようにしています。

「楽しい」だけじゃない日本が知りたい
―今後の目標や将来の夢は何ですか?
今、JETプログラムに応募しています。日本で働く機会を得て、もっと日本について深く知りたいと思っています。今までは訪日研修や旅行だけで、日本滞在は楽しい経験だけでした。でも、日本で働いたり、日本で生活したりすることによって、日本についてもっと深く知ることができると思っています。将来の計画として、日本語学の修士課程に進みたいと思っていましたが、今はまだ考え中です。新卒の自分にとっては、自分が何者か、何ができるか、何を選べばいいかわかりません。でもそれが青春だと思っています。
―Minhさんのような、これからのベトナムと日本の将来を担うにほんご人に、先輩としてメッセージをお願いします。
日本に興味を持っている学生たちに大切なのは、できるだけ理想を持たないことです。日本人や日本という国を自分の目で見て、考えて調べてみた方がいいと思います。
いつどんな時も自分の目で見たもの、自分で感じたことを大切にしているMinhさん。将来はどんな分野でベトナムと日本の架け橋になってくれるのでしょうか。まだまだ続くMinhさんの「青春」に期待しています。
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インタビューは日本語で行いました。本稿はインタビューの際のご本人の日本語を編集したものです。写真はいずれもご本人からの提供です。
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2025年8月20日
執筆/松田涼子(同センター日本語専門家)
編集/藤井舞(同センター日本語専門家)
宮川裕士朗 (同センター日本語指導助手)
土谷リサ(同センター日本語事業担当スタッフ)
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