Tran Phu(チャンフー)英才高校のPham Thi Huyen(フエン)先生
Le Hong Phong(レホンフォン)英才高校のTran Thi Trung Anh(アイン)先生
2024年の8月に日本で開催された「にほんご人フォーラム2024」 にべトナムから参加した2人の先生に、研修での学びとこれからの授業についてうかがいました。このフォーラムの目標は、これからの社会を生きる世代に求められる能力を育てる日本語の授業/活動案を考えることで、研修の最後に、自分の国でできる授業案を国ごとのグループで協力しながら考えました。
アイン先生 フエン先生
授業で大切にしたいこと
‐はじめに、この研修に参加していちばん勉強になったことを教えてください。
フエン:自分の国の教育の中で大切にされている能力について深く考えたことです。私は、それをコミュニケーションスキル、コラボレーションスキルの二つだと思っていますが、この二つの能力を育てるためにどんな活動をする必要があるか、またその活動を組み立てるときのステップを学びました。
アイン:私も、これからの生徒にとって、コミュニケーションスキル、協働する力、そして、創造力が大切になると思っています。それは教えることではなく、生徒に考えさせる機会を与えることだということを、研修で認識しました。
‐研修に参加する前と後では、授業に対する考え方が変わったということでしょうか?
フエン:はい。前は、 授業で私が生徒にいろいろなことを話したり与えたりしようとしましたが、研修後、私が話すことをできるだけ少なくして、学生たちに考えさせる時間を多くとるようになりました。
アイン:私も生徒が身のまわりのトピックについて興味を持って、意見を言えるようになることが大切だと思っています。 ただ、高校生にとってそれは難しいことで、そこで鍵になるのが生徒同士のコラボレーションだということを、研修での生徒同士の学び合いを見て実感しました。生徒一人一人が自分が得意なことを見つけて貢献できるように、また、生徒同士がいろいろな意見を言えるように工夫することが教師の大切な役割だということに気づきました。
授業計画:ベトナムの世界遺産を守る
⁻お二人が研修で協力して作った活動案「ベトナムの世界遺産を守るための提案」について教えてください。
フエン・アイン:研修には私たちが参加した教師プログラムと並行して生徒プログラムがあり、ベトナムからも4名の生徒が参加しました。生徒プログラムは「わたしのまちはサスティナブル?」というテーマで行われ、最後に、生徒たちは5カ国からなる多国籍グループでサスティナブルについて伝えるための3分の動画を作成し発表しました。その活動のステップが「知る」「深める」「体験する」「まとめる」「伝える」という5段階になっていたので、それを使って授業計画を考えました。
‐この活動を 、ベトナムに戻ってから実際にやってみたそうですが、どうでしたか? 工夫した点などを教えてください。
◆実践例1:チャンフー英才高校12年生(4グループ) 全45分×5コマ
フエン:生徒が積極的に取り組んでくれてとても楽しい授業になりました。 1) はじめに、生徒にとって身近でよく知っているハロン湾(北部の世界遺産)の写真とビデオを見せて「今、どんな問題があるか?」「どんなことが起こっているか?」と聞きました。ここで私がいろいろな資料を見せたり教えたりしないで、生徒 に調べさせたり考えさせたりする時間を大切にしました。実際、生徒たちはインターネットからいろいろな資料を見つけたり、また、行ったことがある生徒も大勢いたので活発な話し合いができました。
2)次に、ハロン湾以外のベトナムの世界遺産でも同様の問題が起こっているのかについて知るために、グループで調べたり、実際に行ったことがある生徒にその場所について話してもらう時間を作りました。それによって視野を広げることができたと思います。
3) 最終活動は、看板やポスター作りにしました。理由はポスターも選べた方がいろいろなところに掲示できると考えたから、それからITスキルの育成にもつながると考えたからです。それぞれのグループが工夫を凝らして制作してくれました。
◆実践例2:レホンフォン英才高校 12年生(2グループ) 全45分×6コマ
アイン:私は生徒数が少なかったので2グループに分けてやりました。活動のプロセスを通じて、生徒たちがいろいろな発見をしました。工夫した点は以下のとおりです。
1) まず、生徒のモチベーションを高めることを大切にしました。そのために、はじめに、好きなベトナムの世界遺産を選んで自由に紹介するというタスクを行いました。それぞれのグループが、フエとホイアンについて紹介したのですが、自分たちが選んだところなので、話したいことがたくさんあり、本当に楽しい紹介になりました。学生にとってベトナム自慢したいことがたくさんあったのだと思います。
2) 次に、問題を把握するには、観察したり、体験したりする段階が必要になりますが、フエもホイアンもホーチミンからは遠くて行けないので、代わりに、そこへ行ったことのある人にインタビューしたり、アンケートをクラスで発表してもらいました。1)の段階では楽しいことが中心でしたが、この段階でいろいろな問題が起こっていることに生徒自身で気づくことができました。
3) 最後に、グループで選んだ地域に置く看板を作ってもらったのですが、好きなところだからそこを守っていきたいという気持ちが引き出せたのだと思います。看板は日本語だけでなく、英語、中国語 など他の言語でも書かれていて、日本以外の言語にも注目するようになりました。これも活動の設定にリアリティがあったからだと思います。
₋今後の展望についてひとことお願いします。
チャンフー英才高校では、これまでもグループでの発表活動を多く取り入れてきましたが、これからは、テーマややり方をより工夫していきたいと思っています。
アイン:1か月に1回ぐらい、このような問題解決型の活動を続けていきたいと思っています。ただ、生徒たちはまだ高校生なので、教科書にあるトピックからテーマを選んで、少しずつやっていこうと思っているところです。
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インタビューは日本語で行いました。本稿はインタビューの際のお二人の日本語を編集したものです。
写真はいずれもご本人からの提供です。
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2025年2月20日
執筆/藤長かおる(同センター日本語上級専門家)
編集/ 藤井舞(同センター日本語専門家)
生駒美帆(同センター日本語指導助手)
藤村春菜(同センター日本語指導助手)
土谷リサ(同センター日本語事業担当スタッフ)
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