ザーライ(Gia Lai)省クイニョン市レ・クイ・ドン専門高校
Trần Thành Trung(チャン・タイン・チュン)先生

思いもよらぬ形で日本語を教えることになったチュン先生。戸惑いながらも、これまで続けてこられた理由と生徒への温かな想いを聞きました。
日本語教師になったきっかけ、それは偶然?それとも必然?
―日本語の先生になったきっかけは何ですか。
実は初めから日本語教師になろうと思っていたわけではないんです。当時、私はラクホン大学で日本語を勉強した後、HCM市で日系会社に勤めていました。ところが、2012年にレクイドン専門高校で日本語教育が始まることになり、この時の教師募集を偶然見た父が日本語教員採用に応募するようにと、突然私に連絡してきたのです。締め切りは父から連絡をもらった翌日でしたが、私は教師として採用になりました。もちろん、とてもびっくりしました。大学の日本語の成績は悪くはなかったですが、レクイドンは専門高校であり、優秀な生徒が集まる学校です。そんな学校の先生として教えられるか不安でした。
「好き」だから伝えたい
―突然のお父様からの連絡で始まった日本語教師ですが、それでも長く続けて来られた理由は何ですか。
周りの友だちは、日本語が話せたり、教えられる先生はかっこいいと言ってくれます。でも、私が日本語の先生を続けている理由はかっこいいからではなく、日本の伝統文化が好きだからです。人と人、人と自然の「和」、お互いへの「敬」、心や環境の清らかさの「清」、日常や人生の静けさを表す「寂」。毎年、生徒に茶道について紹介したり、体験する機会を作っていますが、お茶を飲むだけではなくて、その茶道の精神を生徒に伝えたいと思っています。「生徒に教えなければいけない」という気持ちではなく、自分の好きなことを「伝えたい」という気持ちが長く続けて来られた理由だと思います。
―授業をするときに、教師として気をつけていることはどんなことですか。
授業前に、その日の学習内容についてしっかりと理解し、目標を確認し、その目標に向かった流れになっているかを確認することはとても大切なことだと思っています。そして、生徒一人一人の理解度は違いますし、性格も違いますから、生徒の理解度、日本語レベルに合わせて活動を考えることを意識しています。楽しい授業のためには、学年や年齢による生徒の心理を理解することが大切だと思います。
―具体的にはどうしていますか?
1年生は新しい勉強が始まって、ワクワクしています。まだ子どもの部分がありますから、イラストや動画をたくさん使います。2年生は子どもと大人の間と言えますが、一人の大人として接した方が良いと思います。例えば、買い物のトピックの時は、おもちゃではなく本物のお金を使うだけでも、生徒は興味を持ってくれます。授業は生徒の興味を引くものでなければいけません。3年生になると大学受験の勉強が忙しくなって、日本語の授業時間以外に日本語に触れる機会が減ってしまいます。でも、私は無理に宿題などを出さず、授業の時間に楽しく、
どの学年でも、学習の中心は生徒だと思っています。先生が「やらせる」のではなく、生徒の主体性を重んじ、生徒が「話したい」と思うように、ディスカッションやグループワークを多く取り入れています。生徒をよく観察すること、生徒に心理に合わせた活動を考えることがとても大切だと思っています。

「大変だけど、大丈夫。」
―最後に、今、がんばっている若い先生たちに、先輩としてメッセージをお願いします
大学で日本語を勉強し、日系会社で働いていたといっても、初めは日本語のレベルも知識も教え方も自信がありませんでした。でも、若い時に仕事で難しいことがあるのは、他の仕事も同じです。
当時は教材もありません。教案の書き方もわかりませんでした。でも、母が教材づくりを手伝ってくれました。そして、今では、生徒が手伝ってくれるようになりました。3年生が1年生用のひらがなカードを作ってくれたりします。若いころの自分や今がんばっている若い先生には「周りの人がきっと支えてくれます。」と伝えたいです。
―チュン先生の授業を見学させていただいたときに、先生と生徒がとても楽しそうに日本語でコミュニケーションをしているのが印象的でした。そんな授業の裏には先生の「日本が好き」の気持ちと生徒一人一人を見守る温かい想いがあったんですね。
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インタビューは日本語で行いました。本稿はインタビューの際の日本語を編集したものです。
写真はいずれもご本人からの提供です。
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2025年10月20日
執筆/蜂須賀真希子(同センター日本語専門家)
編集/藤井舞(同センター日本語専門家)
宮川裕士朗 (同センター日本語指導助手)
土谷リサ(同センター日本語事業担当スタッフ)
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