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授業は楽しく、ユーモアを持って

ホーチミン市経済財政大学(UEF)のNguyen Ngoc Minh(ミン)先生にインタビュー

 

今回は、民間の日本語学校、実習生送り出し機関、そして、大学と様々な機関で通算14年にわたり日本語を教えてこられたミン先生に、それぞれの機関で経験されたことを楽しくお話しいただきました。

 

 

ドラえもんから大人も学ぶ

-日本語はいつ勉強を始められたんですか?

「大学生の時に第2外国語として勉強をしました。きっかけはドラえもん、ベトナムでは一番有名ですね。ドラえもんを見ていたら、やっぱり日本のことが好きになりました。大学生になって、子供の頃を思い出して、日本語を勉強することにしました。ドラえもんが人気なのは、ロボットの猫が面白いということではなく、人間のことだからですね。人間の考え方が分かる、例えば、失敗したらどうしますか、といった考え方を学ぶことができます。テレビは家族で一緒に見ますから、子供が好きだと、親も好きになるし、マンガを買うのに、親がお金を出してくれるようになりますよね。実は子供だけでなく、大人も好きで見ていて、そこから学んでいるんだと思います。」

 

勉強じゃなくて訓練だと思いました!

-どうして日本語教師になろうと思いましたか?

「大学卒業後は2年ぐらい旅行会社で働いていました。いろいろな国の人を英語で案内していました。そしたら、旅行者の中に日本人がいました。日本人は英語ができなくて、それで私は簡単な日本語で話すようにしました。その時に日本語が面白いなと思って、もっと勉強したいと思うようになりました。ちょうどその時に、ある日本語学校の広告を見たんです。仕事をしながら、教師になるための日本語コースを1年間受けられる、1か月80万ドンの給与ももらえる、というものでした。私はすぐに応募しました。大学生の応募者が多かったですね。そして、48人が入ったのですが、1か月で24人になりました。実はとても厳しくて、勉強じゃなくて訓練だと思いました。毎日毎日漢字を覚え、その漢字を使った単語で文を作らなければならない。そして、毎月1回大きなテストがあって、漢字、文法、聴解、作文、会話の試験を受けて、合格すると次のレベルに進みます。1年で新聞が読めるようにならなければならないと言われ、試験に落ちたら、『さよなら』と言われました。でも、私はその時日本語が大好きですから、頑張りました。1年経って残ったのは3人でした。」

-それで日本語教師になられたんですね。

「1年間勉強した後、その学校で3年間教えるという契約でしたので、その学校で教師になりました。でも、初めは教える知識がないので、3か月ぐらいはいろいろな先生のクラスに入って、教え方や学生の様子を見ました。その後、先生になるための試験がありました。校長先生と経験のある先生の前で模擬授業をしました。2週間で準備をしましたが、その間はよく眠れなかったですね。寝ても夢の中で教えていました。でも、1回で合格できました。その時に校長先生からは『私たちは厳しいですけど、あなたは私たちを笑わせてくれました。いい授業でした』と言われました。そして、教師になることができました。」

 

生徒一人一人に対応しながら

-教師になって、どうでしたか?

「留学希望者や実習生などいろいろな生徒に教えましたが、やっぱり楽しいと思うこともあれば、辛いと思うこともありました。楽しかったのは、いい授業ができた時です。そして、辛かったのは、生徒の日本語力が上達しないとか、遅刻や欠席する生徒が多いとか、出席してもやる気がない生徒がいるとかですね。そんな時は、経験のある先輩の先生に相談しました。そして、生徒にいろいろなことを聞くようにしました。例えば、どうして学校に来ないのか聞きました。すると、ある生徒が勉強する時に漢字が多くて難しいと言いました。また、ある生徒は文法が難しいと言いました。あ、そうなんだと思いました。それで、それぞれの生徒にアドバイスをしました。それから、『心配しないでください、毎日30分早く来て、私に相談してください』と言って、生徒一人一人が相談できるようにしました。」

 

送り出し機関で校長に

-ずっとその学校で教えられたんですか?

「いいえ、その学校では3年間教えて、その後は実習生送り出しの会社で教えました。そこには600人ぐらいの生徒がいました。教師はベトナム人10人、日本人6人がいました。そして、その中の一人の日本人の先生から、それまでとは違う教え方を学びました。訓練のように覚えさせるのではなく、例えば、ここではどんな助詞を使いますかというように生徒に質問して考えさせるのです。初めはびっくりして、私は分かりませんでした。でも、その日本人の先生の授業を何度も見に行って、教え方を学びました。その後2年ぐらい教えたころ、私はその会社の社長から、校長になってくれと言われて、校長先生になりました。でも、それまで通り日本語を教える仕事をしていました。また、この会社にいる間に、国際交流基金の研修、海外日本語教師研修に参加することもできました。本当にうれしかったですね。2014年の1月から約3か月間、日本に行って、日本の文化を体験したり、教え方を学んだりしました。特に覚えているのは音声の教え方ですね。そこで学んだことはその後の私の教え方に影響していると思いますし、研修で経験したことを日本や日本文化が好きな人に伝えようと思いました。」

 

大学生にはお客様のようにやさしく

-その後、大学の先生になられたんですよね、どうして校長先生の立場をやめてまで大学の先生になりたいと思ったんですか?

「その後、私はある大学の日本語教師になりましたが、それは新しい環境に入りたかったからです。10年ぐらい実習生に教えましたから、別の対象にも教えたいと思いました。実習生は高校を卒業していない人も多いです。大学生は高校を卒業していますから、知識も考え方も違うと思いました。でも、実際に教え始めると大変でした。実習生はですね、みんな日本に行く前に勉強しなければならないんです。義務ですね。みんなルールを守らなければならない。なので、みんな先生のことが大事です。先生の指示が大事です。でも、大学生は違います。大学生はお客様なんです(笑)。お客様なので、やさしく教えなければならない。そうしないとみんな授業に来ないんです。そして、日本語の授業時間は少なく、モチベーションが低い。それで私は教え方を変えなければなりませんでした。新しく教案を作りました。大事なことだけを教える、本にあることを全部教えたら時間が足りないです。初めはうまくできませんでしたが、1か月ぐらいで慣れました。イラストを見せたりして、やさしく面白い授業をするようにしました。みんなが笑って、楽しく授業を受けてくれるようになりました。大変でしたが。」

 

失敗から学ぶチームワークの日本語授業

-その後、どうしてホーチミン市経済財政大学(UEF)の教師になったんですか?

「初めの大学は非常勤でした。今度は常勤のポストがありました。UEFの外国語・国際文化学部です。友達の紹介で試験を受けて合格しました。今は、文法・語彙、聴解、会話の授業を担当しています。UEFの学生はみんな熱心に勉強します。課題を出すと、チームを作ってやってくれます。例えば、文法について課題を出すと、文法を勉強するためのアイディアを考えて、絵を描いたりして発表してくれます。初めはもちろん、うまくできませんでした。学生はやりたくなかったです。それで、私は将来のことについて学生と話しました。『今は日本語を勉強していますが、将来、卒業して会社に入りますね。仕事をする時、自分の意見やアイディアを発表しなければなりません。それから、会社ではチームで仕事をします。ですから、友達の意見も大切ですね。友達のやり方も見てください。そして、誰でも失敗することがあります。失敗した時は友達に聞いてください。そうすることで失敗から学ぶことができます』と。」

 -そうした教え方はどこで学んだんですか?

「さっき話しましたが、送り出し機関で教えていた時に日本人の先生から習った方法です。大学で教えるのにこの考え方はとても役に立っています。あの先生との出会いで私も変わったんだと思います。それから、あの訓練のように勉強させる学校も今はもうあのような教え方はしていませんよ。」

ミン先生が現在教えられているUEFは2007年に設立された大学です。経営学部や法学部などと共に外国語・国際文化学部があり、英語はもちろんのこと、日本語、韓国語、中国語を学ぶことができます。日本語を勉強している学生は日本語専攻のほか、経営学部の学生など選択外国語で学ぶ学生を含めて約200人とのことです。

 

 

授業は楽しく、ユーモアを持って

-今後の予定は何かありますか?

「私はどうやったら勉強の楽しさを学生に伝えられるかということに興味があります。日本語を勉強する時間は楽しい時間だと学生に思わせたいです。そのためには教師も楽しく勉強して、勉強好きでなければなりません。教師が勉強好きなら学生も勉強好きになるでしょう。そのために私はいつもユーモアがある人になりたいと思っています。そして、授業では面白いことを考えて楽しく教えます。学生の前では別人、俳優のようなってもいいと思っています。将来はやはり、自分の学校を作って、日本語が大好きな人、日本に興味を持っている人に教えたい。日本語だけでなく、日本人の考え方を教えたいですね。」

筆者はここで最初にミン先生から聞いたドラえもんのことを思い出しました。ドラえもんの漫画を読むように、その面白さを楽しみながら、日本人の考え方も学ぶ、ミン先生はそれを日本語教育で実践しようとされているのだと思いました。

 

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本稿はインタビュー内容を編集したものです。インタビューは日本語で行いました。また、以下のサイトも参考にしました。写真はいずれもご本人からの提供です。

ホーチミン市経済財政大学(UEF)  https://www.uef.edu.vn/
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2021年10月20日
監修/安藤敏毅(同センター所長)
執筆・編集/片桐準二(同センター日本語上級専門家)
編集/山田清美(同センターアジアセンター調整員)
   久保亜樹(同センター日本語指導助手

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