VNJ マンパワー株式会社で実習生に日本語を教えるDo Thi Thu Oanh(オアイン)先生
高校生のとき日本の経済発展について日本人教師から聞いたのをきっかけに、日本に興味を持ち、大学で日本語を学んだオアン先生。2023年の夏に国際交流基金日本語国際センターで行われた海外日本語教師教授法総合研修(以下、訪日研修)での体験と、その後についてお話を聞きました。
訪日研修で学んだこと
-研修では、どんなことを経験しましたか。
研修では、まず、日本語の教え方について考える活動がありました。例えば、どのように授業を組み立てていくかグループで話し合い、模擬授業をし、良かったところや直すべきところを言い合いました。また、文化体験や、日本の高校へ見学にも行きました。あいにく夏休みで部活動を見るだけでしたが、伝統的な楽器、バレーボール、ダンス、英語クラブなど、いろいろな部活動を見学しました。高校生や先生方にインタビューもでき、ベトナムの高校との違いについて考える機会になりました。
-特に印象に残っている活動は?
やっぱり文化体験です。三味線の演奏を目の前で聞いたり、実際に弾いたりすることもできました。初めて伝統的な楽器に触れられて、嬉しかったです。
-この研修を通して、どんなことを得られたと感じますか?
異文化理解の教育についてより深く理解し、自分でも実践できるようになりました。私は技能実習生に日本語を教えていますが、それまでは日本の生活や日本のことはあまりわからなくて、自信がありませんでした。今は、自分の指導方法に新しいやり方や考え方を取り入れることにもチャレンジを続けています。
ベトナム帰国後の実践
-研修のあと、授業に変化がありましたか。
日本の生活について、前は授業で私が話すだけでした。研修での経験から、今は学習者に文化の違いを発見させ、話し合いをさせるようにしています。私の説明を漠然と聞くのではなく、自分で考え、気づきます。そして、その気づきについてクラスメイトと話し合うことが大切なのです。このように教師から学習者に考えるきっかけを与えることで、以前より楽しんで授業に参加してくれるようになりました。例えば方言について「ベトナムでは、どうですか?どう思いますか?」と問いかけます。前は黙って聞くだけでしたが、今は日本とベトナムの違いを発見し、みんなで話し合い、発表します。また、日本の生活に必要な情報が載っているので JFVN作成の『いろどり』「生活」紹介のパワーポイントをよく使います。内容が充実していて、とても役に立ちました。
-日本語の授業についても、なにか活かしていることがありますか。
授業では、よりイラストを活用するようになりました。文型導入の時にイラストを見せ、教師は問いかけをしながら学習者にこれから学ぶ文型が使われる場面を推測させます。ドリル練習の時も、いくつかのイラストを見せ、学習者はそれを見て学んだ日本語を使った文を言います。こうしたイラストを多用する教え方は以前から知っていましたが、研修の後で自信を持ってできるようになりました。研修で先生たちがやっていたことを私も真似て、実践しています。また、1つのイラストだけでなく、「みんなの教材サイト」でいろいろなイラストを探すようになりました。色もついているし、日本的なイラストがあって便利です。
-最後に今後の目標を教えてください。
私自身の日本語力の向上はもちろんですが、日本の文化をたくさん知って、それを伝えられる教師になりたいです。訪日研修で日本文化を体験しましたが、もっと日本人の心や、文化や生活など、いろいろなことを知りたいと思っています。
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インタビューは日本語とベトナム語で行いました。本稿は、インタビューの際のご本人の回答を編集したものです。写真はいずれもご本人からの提供です。
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2024年10月21日
執筆/土屋仁美 (同センター日本語専門家)
編集/藤長かおる(同センター日本語上級専門家)
生駒美帆(同センター日本語指導助手)
藤村春菜(同センター日本語指導助手)
インタビュー通訳・翻訳/Nguyen Phuc An(同センターアシスタントプログラムオフィサー)
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