小学校教師のNguyễn Ngọc Bích(ビック)先生
ビック先生が小学生に日本語を教え始めたきっかけは、数年前に勤めている日本語センターで、新規開講の小学生クラス担当に抜擢されたことだったそうです。現在は、そのセンターだけでなく、小学校でも日本語を教えています。今回のインタビューでは、小学生に教えることや小学校での授業についてお聞きしました。
とにかく元気いっぱい
-初めて小学生に教えた時の印象はどうでしたか?
とにかく元気いっぱいという印象でした。おしゃべりが大好きで、授業の内容に関係なく、いろいろなことを話してくれます。そんな元気いっぱいの生徒たちに癒されながら、毎回の授業をしていました。ただ、じっと座っていられない生徒も多かったので、特に慣れるまでは、クラスコントロールが大変だった記憶があります。
-どのようにして、クラスコントロールができるようになりましたか?
生徒たちとルールを決めました。「授業中には授業に関係のある話をする」や「関係のない話は授業時間外にする」などのシンプルなものです。ルールを決めてからは、素直に授業を受けてくれるようになりました。もちろん、ルールを決めるだけではなかなか難しい部分もあります。なので、生徒たちの興味や関心を引き出すために、様々な活動を行って生徒たちが集中できるようにしています。
大人数のクラスでも一工夫
-生徒たちが集中できるように、どんな活動を行っているのですか?
授業に参加してもらうために、イラストや音声、歌などを積極的に使うことを心がけています。教師だけが話すような講義スタイルはできるだけ避けて、生徒たちに参加してもらうことが重要だと考えています。特に効果的だったと感じたものは、寸劇とプレゼンテーションです。
寸劇は、単純な会話のロールプレイです。会話をする練習になり、どんどんと話し方が自然になっていきました。その様子を動画で撮影して、生徒たちの会話を振り返ると、上手になっている様子がとてもよくわかります。
プレゼンテーションは日本文化に関係する活動なので、ベトナム語で行います。まず、教師が「桜」や「富士山」など日本文化に関係のあるテーマについてスライドを見せながら話をします。生徒たちは、教師の話の中から興味のある部分を覚えて、自分の言いたいことを準備します。そして、教師のスライドを利用して、みんなの前で発表をします。小学生なのでとても簡単な発表ですが、みんな自分の意見を言いたがっていたので、とても有意義な活動になりました。
-大人数のクラスだと活動をするのは大変そうですが、どんな工夫をしていますか?
クラスをいくつかのグループに分けて、それぞれのグループで監督役の生徒を決めます。その生徒に、リーダーやまとめ役のような役割を担ってもらいます。役割を与えられた生徒はしっかりとその役割を全うしようと頑張ってくれます。そうはいっても、グループワークに参加できない、しない生徒はいますので、そういう生徒がいたら個別に話しかけて対応することも大切だと思います。
活動を行うたびに、上手くいったところや改善したほうがいいと感じたところがたくさんあります。毎回、活動を行いながら、生徒たちがよりよく活動に参加できるように考えています。
愛情をもって、楽しく
-最後に、先生自身が生徒と接するときに大切にしていることを教えてください。
大切にしていることは、生徒たちに対して、常に愛情をもって接することと、生徒が自ら日本語を勉強したいと思えるような楽しい教室にすることです。
生徒たちは小学生ですから、親のすすめで日本語を始めた生徒が多いかもしれません。でも、生徒自身が自分で日本語を勉強したいと思ってほしいです。そういう気持ちをもって授業に参加してもらえるように、愛情をもって接し、楽しくプレッシャーのない教室を作りたいと思っています。
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インタビューはベトナム語で行いました。本稿はインタビューの際のご本人の回答を日本語に通訳し編集したものです。写真はいずれもご本人からの提供です。
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2024年6月20日
執筆/柿内良太(同センター日本語専門家)
編集/藤長かおる(同センター日本語上級専門家)
生駒美帆(同センター日本語指導助手)
藤村春菜(同センター日本語指導助手)
Le Thu Trang(同センター日本語事業担当スタッフ)
インタビュー通訳・翻訳/Nguyen Phuc An(同センターアシスタントプログラムオフィサー)
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