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毎日が新しい!医療通訳の仕事

ハノイフレンチホスピタルのNguyen Phuong Changフオン・チャン)さん

 

フオン・チャンさんはハノイフレンチホスピタルの医療通訳者です。医療通訳とは、外国人などが医療サービスを受ける際に言語的なサポートをする仕事で、チャンさんは主にベトナム語と日本語の通訳をしています。医学の知識や経験がないなかでこの仕事を始めた経緯や苦労、やりがいについてお話を伺いました。

 

 

日系企業に入って日本へ

どうして日本語の勉強をしようと思いましたか?

「私の出身はハノイではなく地方で、最新の情報が手に入りにくく、農業をしていた両親は将来のために何を勉強した方がいいか、あまりアドバイスしてくれなかったので、大学についても自分で調べなければなりませんでした。英文学部にしようと決めましたが、英語だけ勉強しても、卒業後に就職先が見つかりにくいと高校の先生に言われました。それで、英語以外の言語についても調べると、ちょうど多くの日本企業がベトナムに進出し始めた頃で、日本語ができる人がまだ多くないことがわかりました。子どものときから日本の漫画や映画をよく見ていましたし、日本に興味がありましたから、その影響もありますね。それに、個人的に日本へ旅行に行くのはお金がかかるので難しかったですが、日本企業で働けば、日本に行く機会もあると思いました。それで、英文学部に加えて日本語学部でも勉強することにしました。」 

 

日本語の勉強はどうでしたか

「とても大変でした。文字の種類もたくさんあるし、漢字や作文も苦手でした。今はしばらく手で書いていないので、漢字はほとんどタイピングでしか書けません。」

 

日本語の勉強には苦労したのですね。

「いえ、そんなことはないです。大学3年生のときから日本のウェブサイトを翻訳するアルバイトを始めましたが、それほど難しくはありませんでした。同級生の中には日本へ留学した人や日本語教師になった人もいましたが、私はそちらの道は選びませんでした。」

 

大学での勉強について印象に残っていることはありますか?

「日本語学部には厳しい先生が多かったのですが、ある日本人の先生のことが印象に残っています。その先生の教え方は分かりやすくて、ずっと文法の説明をするのではなく、学生をグループに分けてたくさん話す練習や翻訳の練習をさせてくれました。日本人のマナーや働き方についても教えてもらいました。それに、先生は日本語クラブを設立して、先生の友達の日本人がハノイに来ると、日本語で旧市街のガイドをする機会を作ってくれました。おかげで、日本人と会話ができました。今でも私たち教え子は先生とよくFacebookで連絡をとっていて、日本へ旅行したときには一緒に食事をします。先生も時々、ベトナムに戻ってきています。」

 

 

医療通訳の仕事との出会い

卒業後はどうしたんですか?

「ハノイにあるITの日系企業で1年働き、そこからの派遣で神奈川県へ行って、2年間、技術者の通訳や翻訳をしていました。ベトナムに戻って会社を辞め、結婚して出産しました。日本にいるときに日本人と結婚できていれば、日本に残りましたが、できなかったので(笑)」

 

それから、どうして今の医療通訳の仕事を始めたんですか?

「娘が8か月ぐらいになった頃、復職しようと思って新しい仕事を探し、日本語を使う銀行の仕事と、ハノイフレンチホスピタルの通訳の仕事を見つけました。医療通訳を選んだのは、家族がいるからです。ハノイフレンチホスピタルはとても有名でいい病院ですし、子どもが病気になったときも安心だと思いました。」

 

医療通訳はどのような仕事ですか?

「私は日本人のカスタマーケアの担当でもあるので、まずは日本人の患者さんから連絡を受けて、自覚症状を確認します。そして、診察する科を決めて予約します。診察当日には患者さんを出迎え、保険の手続きをします。今、日本人の多くがキャッシュレスサービスを利用するので、フォームや診断書を準備して、後で保険会社に請求します。診察の時には通訳をして、薬の処方があれば、飲み方の説明をします。薬を飲んでも良くならないなど、患者さんから連絡があれば、医者に確認して患者さんに返信します。」

 

看護師のようですね。

「看護師みたいですが、注射はできません(笑) この仕事を10年しているので、時々、医者が言う前に、何をするのか、いつ検査するのかなどが分かります。」

 

仕事を始めた頃はどうでしたか?

「最初は難しいと思いました。ベトナム、フランス、それ以外の国の医者がいるので、英語も使うことがありますし、医学用語がすごく難しかったです。病院に日本語の通訳は一人しかいないので、外科、内科、神経内科などどんな分野でも通訳しなければなりません。最初の1、2年はとても大変でした。はじめの2か月ぐらいは前任者が教えてくれたり、病院から医療に関する研修を受けたりしましたが、いつも手帳にメモして勉強しながら通訳をしていました。今は慣れましたが、病気や症状についての詳しい説明を通訳するとき、時々恥ずかしくなることもありました。いろいろな性格の医者がいるので、対応するのも難しかったです。」

 

では、この仕事のおもしろいところは何ですか?

「毎日新しい人に会えますし、新しいことがあります。同じプロセスですが、患者さんも違いますし、病気もいろいろあります。時々、日本からの旅行者が事故などに遭って病院にかかり、無事に治って日本に帰ることができると、とても嬉しいです。日本から写真やビデオレターが送られてきたこともありました。患者さんとはどこのカラオケがいいかという話をするなど、友達のようなところもあります。人を手伝うことができるところが、この仕事のいいところだと思います。」

 

やりがいを感じていらっしゃるんですね。

「一人で対応しなければならないので、時々連絡に追われることもありますが、今はほとんど難しいことはありません。この病院で働く400人ほどのスタッフと仕事をしていることになりますが、問題ありません。」

 

これからの目標や夢はありますか?

「ハノイフレンチホスピタルを、日本人が誰でもわかる有名な病院にしたいです。病気や怪我をしたときに、多くの方にハノイフレンチホスピタルにご連絡いただけると幸いです。日本人の医者が加われば、日系企業の方にも健康診断のサービスをご利用いただくなど、サービスもより広がるだろうと思います。」

言葉が通じない外国で病気や怪我をすると、とても不安なものですが、チャンさんのような医療通訳の方に出会えると、すごく心強いだろうと思います。たくさんの人に会うことが好きだというチャンさんにぴったりな仕事だと感じました。

 

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インタビューは日本語で行いました。本稿はインタビューの際のご本人の日本語を編集したものです。写真はいずれもご本人からの提供です。

発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2022年12月20日
執筆・編集/久保亜樹(同センター日本語指導助手)
編集/藤長かおる(同センター日本語上級専門家)
           山村陽子(同センター所長補佐)
           土谷リサ(同センター日本語事業担当スタッフ)

 

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