ー Lyna Nguyen(グエン莉奈)さん ー
今回は、United Insurance Company of Vietnam(損保ジャパンのベトナム現地法人)で日系企業向けの営業を担当しているLyna Nguyen(リナ)さんにインタビューしました。リナさんのご家族がベトナムから日本へ移住したので、リナさんは日本で生まれ育ちました。日本で日本語とベトナム語を学び、今、ホーチミンで働いているリナさんに、現在の仕事や、日本とベトナムに対する思いについて話してもらいました。
形のない商品を売るからこそ、信頼が大切
リナさんは大学を卒業した後、日本で会社員として働いていました。しかし、もっと自分の能力を高めたいと思って、ホーチミンで働くことを決めました。今の会社で働くことになったきっかけは、友人からの紹介だったそうです。はじめは営業の仕事に対して「少しこわい」という気持ちもありましたが、好奇心を持って、新しい仕事に挑戦しました。
「保険は無形商材、つまり目に見えない商品なので、お客様から信頼されるかどうかがとても大切です」
お客様のニーズに合わせて保険をデザインし、わかりやすく提案するのはもちろん、幅広い業種の顧客を相手にするためには、さまざまな知識を学ぶ必要があります。リナさんはお客様の仕事についても少しずつ勉強していきました。そういった地道な努力をした結果、契約できたときがいちばんやりがいを感じる瞬間だそうです。
日本とベトナムに対する複雑な思い
通常、保険の営業活動は日本人とベトナム人のスタッフが協力して行いますが、リナさんは語学を活かして、日本人、ベトナム人どちらのお客様でもひとりで訪問し、面談をすることが多いそうです。そんなリナさんですが、学生時代には悩みもあったと話してくれました。
「日本の文化は学校などで勉強しましたが、家庭内はベトナム文化でしたし、両方に抜け(足りないところ)があるという感じでした。お正月のおせち料理なんかは、いまだにちゃんと食べたことがありません」
「子どものころから、うちでは家族とベトナム語で話していましたが、高校生になっても、子どものようなベトナム語しか話せませんでした」
自分で考え、動くからこそ見えるもの
そこで、リナさんは大学でベトナム語を専攻することに決めました。母語であるベトナム語を学び直したことで、日本語とベトナム語について新しい発見があったそうです。
「ベトナム語も日本語も一見違うように見えて似たような言い回しも多いことに気づきました」
「今まで感覚で何となく使っていた言葉をちゃんと勉強すると、発見が多かったです」
そして20歳のとき、ひとりでホーチミンを訪れました。それまでご家族といっしょに来たことはありましたが、ひとりで来たのは初めてでした。そのとき、今までとはまったく違う気持ちになったそうです。人から言われてやるのとは違って、自分で考えて、自分で動くことによって、より貴重な経験ができると感じたとのことです。
お客様がいるところなら、どこへでも
リナさんは営業の仕事を始めて5年になります。今はホーチミンだけでなく、ダナン、フエ、カントーといった都市へも出張して、営業活動を行っているそうです。
「若いうちにたくさん経験を積みたいので、いろいろなところへ行ってみたいです」
「お客様に会うのは、1年に1回、保険を更新するときだけではあるけれど、『お客様がいるところなら、どこへでも行く!』という気持ちで働いています」と力強く話してくれました。
リナさんは将来、自分の好きな日本の商品をベトナムで売る仕事もしてみたいそうです。営業の仕事を通して、いろいろな知識や経験を身につけて、世界を広げていくリナさんのこれからに期待しています。
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インタビューは日本語で行いました。本稿はインタビューの際のご本人の日本語を編集したものです。写真はいずれもご本人からの提供です。
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2024年8月20日
執筆/赤木友架理(同センター日本語専門家)
編集/藤長かおる(同センター日本語上級専門家)
生駒美帆(同センター日本語指導助手)
藤村春菜(同センター日本語指導助手)
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