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ダンスで日本留学!

 仲間よさこいチーム振付師にインタビュー

 

 今回はハノイで活躍する「仲間よさこいチーム」のメンバーで振付を担当されているTạ Thị Mỹ Hạnh(ハイン)さんにインタビューをしましたので、そのお話を紹介します。チームのPhan Tiến Dũng(ズン)代表にもご同席いただき、チームについてのお話も伺うことができました。

 

左がハインさん、右がズン代表 (写真提供:ハインさん)

 

ダンス歴10年、日本語歴8年

-ダンスはいつごろから始められたんですか。

「10年ぐらい前からです。初めは韓国のアイドルグループが好きでカバーダンス*をやっていました。その時に知り合いがよさこいを踊っているというので、見に行ったんです。そこで、まず鳴子を初めて見て、これは何? 面白そう、と思ったんです。それでよさこいに興味を持って、2012年にこのチームに入りました。」と、ハインさんは流暢な日本語でお話ししてくださいました。

実は前回ここに掲載した日越大学のガーさんに仲間よさこいチームを紹介していただいたのですが、このチームには日本語がよくできる方がいらっしゃるということで、この日は通訳なしでインタビューに来たのです。ハインさんにいつからどうして日本語の勉強を始められたのかを聞いてみると「8年前、よさこいを始めたばかりのころだったと思いますが、嵐というグループが流行っていたので、字幕を見ないで嵐のメンバーが話していることを理解したいと思うようになって。それで日本語の勉強を始めました。よさこいの影響で日本に興味を持ち始めたんです。」とのこと。よさこいが韓国ファンを日本ファンに変えたようです。

*カバーダンス:K-POPアイドルのダンスをカバーし、イベントや動画で披露すること。

 

ダンスで日本留学!

-どうやって日本語を勉強しましたか。

「日本語センターへ行きました。ひらがなとカタカナから勉強を始め、そのうち、漢字が出てきて、とても難しかったですね。2年半ぐらい通いました。この間に日本料理のレストランでもアルバイトをして、簡単な日本語が分かるようになっていました。で、よさこいを学びたくて日本留学を決め、2014年に留学しました。」と、話が急展開。嵐が言っていることを理解したいから始めた日本語だったのですが、2年余りの間に「よさこいが学びたくて日本留学」に変わっていたのです。

よさこいで留学ができるんですか、と聞いてみると、「留学をして初めの2年は日本語学校に通いました。その後、東京にあるダンスの専門学校に入りました。日本語はそんなにできたわけではないですが、学校は全て日本語でした。週1回だけ英語の授業もありましたけど。バックダンサーコースでしたが、いろいろな勉強ができました。メインがヒップホップで、あとはバレー、タップダンス、モダンダンス、アクロバットなどです。ここで初めて専門的にダンスを習いました。よさこいは学校では習っていません。実は学校とは別に、プロのダンサーもいる東京のよさこい集団「天空しなと屋」の「しん」というチームに入ったんです。」

 

日本のよさこいを学んで振付師に

「天空しなと屋」とは、そのウェブサイトによると「踊りを通じて、文化のバトンを次世代へ繋げるクリエイター、日本&世界からの参加者による踊り子集団」で、2009年に設立されています。ハインさんがお話しになった通りプロの方がいるよさこい集団です。メディアへの出演や有名アーティストとのコラボといった踊りの披露だけではなく、踊りの指導や作品の提供も行っています。また、海外展開もしており、ベトナムでもワークショップを開いて指導をしたり、合同チームを作って演舞を披露したりしています。その「天空しなと屋」にはいくつかのチームがあり、その一つが「しん」なのだそうです。

「しん」は2010年に設立されたよさこいチームで、東京原宿・表参道を拠点に活動しているとのことです。ハインさんによると、日本のチームの練習はとても厳しく、練習前のウォーミングアップも30分以上あるなど練習方法が違うけれども、練習会場が綺麗で大きなホールで、鳴子は各チームでオリジナルのものを使っているなど、恵まれていると感じたそうです。

ハインさんはダンスの専門学校在学中に東京ドームで行われた韓国グループ2PM(THE 2PM in TOKYO DOME)のオープニングダンスをするという経験もされ、卒業後は日本でダンサーの仕事をと考えられていましたが、残念なことに卒業「作品」作りで無理をしすぎて腰を痛め、日本での仕事は諦めて帰国されたとのこと。

よさこいというのは次々と新しい「作品」を創作して踊り続けられるものなのだそうで、例えばハインさんの所属していた「しん」の歴代「作品」も公式サイトで見ることができます。留学を終えてベトナムに戻ったハインさんは「作品」を創作する振付師として仲間よさこいチームに戻り、踊りを指導する立場になっています。

 

振付指導をするハインさん(筆者撮影)

 

よさこいチーム立ち上げ屋のズン代表

ズンさんにお聞きます。いつからこのチームの代表をされていますか。

「仲間よさこいチームは私が数名の仲間と一緒に2012年に結成しました。私は元々ハノイ1000年よさこいでチームリーダーをしていました。このチームは1年中活動をし、練習も多いのですが、メンバーの中には仕事を持っていて、練習が続けられない人が多くなってきました。私も普通の日は仕事をしています。そこで、そうした仲間たちと一緒に別のチームを立ち上げようということになったのです。仲間よさこいチームは年に一回の桜祭りへの出場に絞って、その半年ぐらい前から週1回練習をしています。もちろん祭り近くになると練習回数を増やすこともありますけど。」

ズンさんはハノイ1000年よさこいチームでもチームリーダーをされていたということですね。よさこいはいつから踊られているんですか。

「私は子供の頃に読んだ漫画の影響で、そして健康のためにハノイ剣道クラブというクラブに入って剣道をしていました。大学生の時です。その剣道クラブによさこいに興味がある人がいて、その人と一緒に桜祭りを見に行ったんです。そこで大勢の人が動きを合わせて踊るよさこいに魅了され、すぐに自分でもやってみたいと思って、仲間と一緒にハノイ1000年よさこいチームを作ったんです。」「えっ、ハノイ1000年もズンさんが立ち上げたんですか」と思わず聞き返してしまいました。

 

日本の大会で新人賞獲得!

ズンさんはよさこいを桜祭りで見た後、そこで演舞をしていたヌイチュックよさこいチームに入ったそうです。2019年の「ハノイ日本桜祭り」では参加したチームだけでも17ありますが、ズンさんが入った2007年当時はまだこの1チームしかなかったそうです。その時自分でも小さなグループを作っていたズンさんは桜祭りの後援団体の方と相談をして、複数のチームがあった方が祭りも盛り上がるということで、その団体のサポートを受けて2008年にハノイ1000年よさこいチームを立ち上げたそうです。

「ハノイ1000年よさこい」は初め「ハノイスーパーよさこい」というチーム名でしたが、2010年のハノイ遷都1000年記念の年に名前を変更したそうです。ズンさん率いるハノイ1000年よさこいチームは2011年に東京で開催された「原宿表参道元気祭スーパーよさこい」に参加しました。その後、ズンさんは上で述べた通り、仲間よさこいチームを結成し、2015年に再び同じ大会に参加し、この時、見事に新人賞を獲得。賞なんかもらえるはずないよと思って、踊った後に遊びに行っていたズンさんを電話で授賞式に呼び戻したのが当時留学中のハインさんでした。

 

2015年東京の大会で踊る仲間よさこいチーム
(写真提供:仲間よさこいチーム)

 

娘と一緒によさこいを踊るのが夢

再びハインさんに質問です。ベトナムではダンスを教えるような仕事はないんですか。

「ベトナムにはダンスを教えるような専門学校はなく、ダンスで仕事を探すのは難しいです。帰国後は、日本語を活かして実習生を送り出す会社に就職しました。初めは日本語教師をしていましたが、実務能力が認められて今は教育部門の管理者をしています。仕事は生徒や教師の管理、教育レポートの作成、時には日本の組合との連絡や打ち合わせに通訳として入ることもあります。」100名以上が日本語を学ぶという機関で様々な仕事で活躍されている様子。日本語で困ることはまだありますかと聞くと、日本人の話はまだ聞き取れないことがあり、特に同音異義語が多いのでよく間違えてしまうとのこと。

今後の抱負や将来の夢は?

「実は私は子供が生まれたばかりなんです。この子を育てるためにも今の会社の仕事を続けます。そして、よさこいも。よさこいの魅力はチームが動きを合わせて踊るところ。今、このチームで振付ができるのは私を含めて3人です。そのうちの一人は私の妹です。よさこいは初めは単なる趣味でしたが、今は私の人生にとってなくてはならないものになりました。腰を痛めて前ほど踊れなくてもやっぱり踊りたいです。夢は娘と一緒によさこいを踊ることです。」

よさこいから日本に興味を持ち、日本語を学んで日本へのダンス留学を果たし、帰国後は日本語を活かした仕事をしながら、よさこいを続けるハインさん。今も桜祭りに向けて振付を指導しているとのこと。祭りの舞台でハインさんの次の「作品」を見るのが楽しみです。

 

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本稿はインタビュー内容を編集したものです。インタビューはすべて日本語で行いました。ズン代表の話はハインさんに通訳をしてもらいました。お話に出てくる桜祭りは現在「ハノイ日本桜祭り」と呼ばれています。以下のサイトも参考にしました。

ハノイ日本桜祭り
https://jsf.vn/

天空しなと屋
https://www.shinatoya.com/index.html

天空しなと屋「しん」
https://edgeofshin.com/

発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2021年1月20日
監修/安藤敏毅(同センター所長)
執筆・編集/片桐準二(同センター日本語上級専門家)
編集/森近美菜(同センター日本語指導助手)
   長田あさみ(同センターアジアセンター調整員)

 

 

 

 

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