コーチングで「自分らしい幸せ」をいっしょに考えたい
―Lê Thúy Anさん―
今回は、若者たちのキャリア形成に関する仕事をされているアンさんにインタビューをしました。アンさんが現在の「コーチング」という仕事至った経緯、そして「コーチング」をする上での思いについて話してもらいました。
「コーチング」という仕事

-「コーチング」とは、どのようなものですか?
「コーチング」は、自分の中にある答えを自ら見つけ出せるようにサポートすることです。
カウンセリングと似ていますが、違うところは相手の悩みや不安の解決を目指すのが目的ではないということです。「コーチング」は目標を明確にして、目標に向けた行動を促していきます。単にアドバイスをするのではなくて、話を深く聞いて問いかける、そして思考を整理していくというのが大切なポイントです。
-どのような方を「コーチング」していますか?
主に社会人で、20歳からくらいの方が多いです。クライアントの約半数は、日本語関連の仕事をしている方です。日系企業で働いてみたけど「自分に合わない」「違うキャリアを選びたい」「キャリアを考え直したい」という目的の方が多いです。社会人だけではなくて、日本語を勉強していて、これから就職するという学生たちにもコーチングをしています。
日本で見つけた「やりがい」
-「コーチング」のお仕事に出会う前はどんなことをしていましたか。
大学で日本語を勉強していたときに、日本の旅館でインターシップを1年ぐらいしたことがあります。大学卒業後は、横浜にある教育関係の会社で働いていたんですが、そこでキャンペーンや市場の調査をしたり英語の教師をしたり、いろいろな仕事を経験しました。その中で、教えることよりも、学習者の相談相手になったり、動機づけを手伝ったりといった役割にやりがいを感じるようになりました。この経験が現在の「コーチング」の仕事につながっていると思います。

「自分の中にある」可能性を見つける
-コーチングで心がけていることはありますか。
私自身、日本語を学んだものの、それを使って何がしたいかがわからないという時期があって、とても悩みました。私自身が悩んだからこそ、今の若い人たちには、もっと早い段階で自分を深く理解し、可能性を広げていってほしいと思って、日々サポートしています。
特に、語学科、日本語学部の学生たちは、大学で「日本語」を身に着けることが中心になりがちなのが現実だと思います。でも、日本語はあくまでツール(道具)で、それを使って何をするかという考えがないと、方向性を見失ってしまうと思います。

-「何をするかという考え」が見つからない学生には、どうアドバイスをしていますか。
学生たちには「すべては自分の中にある」とよく伝えています。自分がやりたいこと、向いている仕事のヒントは、すべて自分の中にあります。それを発見するために最も重要なのは、「たくさん経験すること」です。確信が持てなくても、「なんとなくやりたい」という気持ちがあれば、すぐに経験してみるべきです。経験したら必ず「振り返り」をします。経験したこと(trải)を振り返り(nghiệm)、「これは良かった」「これは違う」と考えることで、初めて自分の強み、才能、価値観といった「自分の中にあるもの」のパターンを認識できるようになります。
アンさんの「コーチング」のこれから

-これからのお仕事で考えていることはありますか。
ほかに、今は新しいツールの開発もしています。自分自身の力で、自分を振り返ることができるようになるためのカードやノートのようなものです。少し立ち止まって、自分と向き合うことや、そういった習慣をつくることは自分らしく生きていくことに繋がると思います。このツールによって、たくさんの人が自分自身の力で、「自分らしい幸せ」を手に入れてほしいと思います。

今後も、多くの人を「自分らしく」生きられるようにサポートしていきたいというアンさん。アンさんご自身も経験(trải và nghiệm)から、自分の可能性を広げ「自分らしく」活躍されているように感じました。
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インタビューは日本語で行いました。本稿はインタビューの際のご本人の日本語を編集したものです。写真はいずれもご本人からの提供です。
発行/国際交流基金ベトナム日本文化交流センター
発行日/2025年
執筆/宮川裕士朗 (同センター日本語指導助手)
編集/藤長かおる (同センター日本語上級専門家)
土谷リサ (同センター日本語事業担当スタッフ)
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